阿南市出身のJICA海外協力隊の活動を紹介します

公開日 2025年01月24日

 現在、パラグアイで、野球の指導・普及活動を行っているJICA海外協力隊、篠原隊員(羽ノ浦町出身)の活動を紹介いたします。
 JICA海外協力隊は、開発途上国からの要請に基づき、青年海外協力隊等として派遣され、現地の人々と共に途上国の課題解決に取り組むことを目的としています。任期は原則2年間で、これまで世界99か国に5万人以上の隊員を幅広い分野に派遣してきました。帰国後は、日本や世界で協力隊経験を生かした活躍が期待されています。

 

表敬訪問 出発前 表敬訪問(市長公室)令和6年7月26日

 


【隊員紹介】

隊員紹介

氏  名:篠原 果寿(しのはら かず)
生年月日:1994年8月25日生まれ(満30歳)
出  身:羽ノ浦町
職  種:野球
派 遣 国:パラグアイ(任期2年)

 

 

【活動報告】


「遠く離れた南米で全力発信。~阿南市で学んだ野球の素晴らしさ~」

 

 阿南市の皆様、はじめまして、篠原果寿と申します。私は阿南市羽ノ浦町出身で、現在は南米のパラグアイという国で野球の指導と普及活動をしております。


 私は小学時代から阿南市で野球を始め、中学時代は徳島阿南シティホープに、高校時代は富岡西高校野球部に所属し、日々甲子園を目指して野球の練習に励んでおりました。卒業後は教員を目指して大学に進学し、教員免許を取得しましたが、好きな野球をより専門的に学びたいと考え、野球研究室がある大学院に進学しました。大学院在学中、少年野球やアカデミー、世界大会など様々な指導現場を経験し、指導方法について学んだほか、海外に直接足を運び、野球の国際普及に関して学ぶ機会がありました。海外で野球の普及に関して学ぶ中、イタリアで出会った野球選手から「このグラブを使い始めてから野球が楽しくなったんだ。」とミズノ製のグラブを私に見せながら話してくれた時、野球普及のカギは用具だと考え、大学院修了後は総合スポーツメーカーのミズノ株式会社に入社しました(以下ミズノ)。


 ミズノでは、国内営業を経験したのち、野球用バッグの商品企画を担当させていただきました。当時は、エンドユーザーである選手のことを一番に考え、時代の変化を捉えたモノづくりを意識し、時には頼りになる経験豊富な先輩社員の助けを借りながら日々商品企画に邁進しました。自分が企画した商品が選手達の手に渡り、日々の練習や甲子園、そして、プロの世界で使用されている姿を目にする瞬間は格別でした。
 在職中の2023年、侍JAPANがWBCで世界一になりました。ミズノはスポンサーとしてチームをサポートしており、当時、より身近に「野球って素晴らしいスポーツだな」と感じることが出来ました。また、それと同時に、「野球がまだ普及していない国の方々にも野球の素晴らしさを伝えたい」と思うようになり、インターネットで検索をし始めました。そんな中、JICA海外協力隊の募集に関するサイトで「南米での野球普及活動」に関する募集があり、応募してみました。そして、数回の試験を経て、23年10月に合格通知をいただきました。しかし、JICAの試験を受けている時も、合格通知を受け取った後も、会社を退職してボランティアに参加するかどうかは非常に悩みました。ミズノは、私自身が幼い頃から憧れていた企業でもあり、会社でやり残したことがまだまだ沢山あり、まだ十分な貢献が出来ていないと思っていたからです。悩みぬいた末に、会社を辞めることは辛いし後悔するかもしれないが、「30歳手前、ここで人生最大のチャレンジをしてみよう!」と決意しました。在職中最後の商品会議でプレゼンをした際、最後に挨拶をする時間を作っていただき、そこで多くの同僚の方々が「会社を去る私」を応援してくれました。あの時、ミズノで出会った素晴らしい方々の思いも胸に、パラグアイでも頑張ろうと思いました。そして、24年3月末にミズノを退職し、24年4月から6月末まで駒ヶ根での派遣前訓練に参加した後、24年8月末、パラグアイに赴任しました。

 

 私がパラグアイで主に何をしているかといいますと、大きく2つあります。1つ目は「現地の私立学校で野球未経験の子供たちに体育授業の一環で野球を教えること」、そして2つ目は、「野球文化のある日系社会の子供達、および指導者に技術指導を行うこと」です。
 パラグアイでは野球の文化はほとんどありません。2010年のサッカーワールドカップで日本がベスト16で敗れたように、パラグアイではサッカーが最も人気なスポーツです。一方、1936年に日系人がパラグアイへ移住した際、日本から野球を娯楽として現地に持ち込み、今も日系人を中心に野球が継承されている地区もあります。私がこの国で野球を教えているのは、野球未経験のパラグアイ人の方々と、野球がもっと上手くなりたい日系社会の方々の両方になります。また、私自身もパラグアイの方々から学ぶことは多く、2年間という短い時間で、教えるだけではなく現地の方々から多くを学びたいと考えております。


 そもそもパラグアイという国がどんな国なのか知らない方も多いかと思います。パラグアイは南米にある内陸国で、国土は日本の1.1倍、そして、日本からはほぼ地球の裏側に位置しております。人口は約682万人(2023年現在)で、日本の約5%と非常に少ないですが、首都は非常に栄えており、人口の3分の1が集中しています。季節は日本とは逆なので、寒い日本とは異なり、今は灼熱の熱さです。私は真夏の日本からパラグアイに来て再び夏なので私の2024年度は一年中夏です。パラグアイは日本から非常に遠く離れているのであまり日本人には馴染みがない国かもしれません。しかし、日本のアニメ文化は人気で、パラグアイでも日本を感じることは多々あります。ラーメンやすき焼きを食べることも出来ます。最も衝撃的だったのは、私が勤務している私立学校の名前が「NIHON GAKKO」という学校名だということです。学校創立者がかつて来日し、日本の教育を学び、その教育方針を取り入れたため、この名称になったとのことです。日本の教育が地球の真裏まで伝播されていることに衝撃と感動を覚えました。


 さて、活動に関して、任期2年のうちの4か月がようやく過ぎたところですが、野球未経験の子供たちに野球をゼロから教えることは簡単ではないと実感しております。野球を見たことも聞いたことも無い子供たちにとって、野球は非常に複雑で難しいです。改めて、幼少期に私に野球を指導していただいた阿南市の指導者の皆さまには感謝したいです。しかし、簡単なことから教えていくことで子供たちは少しずつ野球を覚えていってくれていることも同時に感じております。バットでボールを遠くに打った瞬間やボールを上手く捕った時の嬉しそうな表情を見ると私も嬉しくなります。今後、野球部のような団体を作り、もっと野球をやってみたいという子供たちに対して深く教える機会を作ってあげたいと考えております。また、日系社会の子供たちに対する指導に関して、彼らは年に2回の日系社会での地区対抗戦に向け、主に週末の時間を使い、野球の練習をしております。これまで彼らが取り組んできた練習方法を尊重しながら、私が日本で学んだ技術も、彼らにとって少しでもプラスになればと思い、指導をしております。遠く離れた国で日系社会の方々が野球を継承してくれていることに感謝し、2年間しっかり彼らとコミュニケーションをとりつつ、微力ながら彼らのスキルアップに協力したいと考えております。

 

NIHONGAKKO挨拶  NIHONGAKKOでの挨拶

 

NIHONGAKKO集合写真 NIHONGAKKO集合写真

 

【現地での生活に関して】

 現地での生活について、活動言語はスペイン語で、私の言語力はまだまだですが、日々頑張っております。私はパラグアイ人の家庭にホームステイをさせていただいており、家族の方々から多大なサポートを受けながら楽しく一緒に暮らしております。日本とは異なる環境にあり、予想外の出来事が多々起きますが、全ては勉強と思い、エネルギーに変えてこれからも頑張りたいと思います。

 

指導風景1 NIHONGAKKOでの指導風景①

 

指導風景2 NIHONGAKKOでの指導風景②

 

指導風景3 NIHONGAKKOでの指導風景③

 

指導風景4 NIHONGAKKOでの指導風景④

 

日系移住地での指導風景 日系移住地での指導風景

 

【阿南市民へのメッセージ】

 長々と書かせていただきましたが、ここまで読んでいただき有難うございました。野球というスポーツは、出場選手に必ずスポットライトが当たる瞬間が訪れます。ミスをしても助け合える「チームスポーツ」でありながら、1対1の勝負が楽しめる「個人スポーツ」の側面もあります。野球の魅力は人それぞれですが、「野球のまち阿南」で子供達が野球に出会い、生涯楽しんでもらえると嬉しいです。大人の皆様には、子供たちに是非野球の楽しさを教えてあげてほしいです。私も少年時代に阿南市で野球に出会い、野球を通して学んだことを胸に、パラグアイでも沢山経験をしたいと思います。
 最後に、パラグアイは治安も良く、温かい人々が多く非常に過ごしやすい国です。この文章を読んで、野球、そしてパラグアイに興味を持ってくれる方がいると私も嬉しいです。貴重な機会をありがとうございました。

 

 

【篠原隊員に関する参考記事】


◎大学院生時代の研究に関する参考記事

「元プロ選手も学ぶ「野球学」広がり見せるワケ」 筑波大学大学院の川村教授が第一人者 (東洋経済オンライン)
➣URL:https://toyokeizai.net/articles/-/259827

 

◎ミズノ時代のバッグ類の商品企画に関する記事

「大谷翔平も使う計測機」を扱う開発者たちの正体 ミズノが実現した「野球データの民主化」 (東洋経済オンライン)
➣URL:https://toyokeizai.net/articles/-/737401


アナリスト業務経験者だから作れた、スタッフ向けバックパックを紹介!(前編) (ミズノマガジン)
➣URL:https://jpn.mizuno.com/mizuno_magazine/product/1010524


アナリスト業務経験者だから作れた、スタッフ向けバックパックを紹介!(後編) (ミズノマガジン)
➣URL:https://jpn.mizuno.com/mizuno_magazine/product/1080524


新作バッグパックはこれまでになくカジュアルでスタイリッシュ!トレンドにマッチしたバッグにNPB選手たちも納得! (高校野球ドットコム)
➣URL:https://www.hb-nippon.com/articles/785


次世代のトレンドはトートバッグ? いまの野球界にマッチした時短のバッグとは? (高校野球ドットコム)
➣URL:https://www.hb-nippon.com/articles/779

 

◎パラグアイでの活動に関する記事
El Nihon Gakko habilita su academia de béisbol (ABC Digital)
➣URL:https://www.abc.com.py/deportes/polideportivo/2024/10/28/el-nihon-gakko-habilita-su-academia-de-beisbol/

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