特色のあるお祭り

公開日 2010年10月27日

暑さがまだまだ残るあなんの秋、青く澄みきった空に
煙火が鳴り響き、風にのって、どこからともなく
祭囃子が聞こえてくる。
秋は、祭りの季節、豊作・豊漁を祈願し、
収穫に心から感謝をささげる。
自然の摂理による祭事が今に受け継がれている
あなんが誇る伝統・文化だ。
阿南の特色あるお祭りの様子をご紹介いたします。

 

 

椿泊町 佐田神社秋季例大祭 だらだらまつり


椿泊町では、佐田神社の祭礼「だらだら祭り」が行われる。
古老に話を聞くと昔は神意と称して、お神興が神社に戻らず、一ヶ月近くも続いたときがあったという。
その間中、毎日おもしろいことをして遊ぼうと、お芝居を呼んだり、映画を上映したりしていたそうだ。
よって、誰がつけたか定かではないが、だらだら(長く)続く祭り―。
だらだら祭り≠ニは、云いえて妙ともいえる。
「もう、えらいよ。なんぼか漁に出とうほうが楽だかわからん・・・(笑)」
汗だくだくになりながら、しゃべってくれる人がいた。
普段、漁師は歩かない。歩くのは船の上だけ。それが、祭りの期間中は、泊の町中を重さ約500kgの神輿をかついで、ほぼ一日中練り歩くのだ。
「もっと、しゃんとひけよ」
取り巻く人たちの中から家族や知人の励ましが次々とかかっていく。

【車座になり、神輿を待つ人たち】
「今もほうやけんど、昔は神輿をかつぐんは、ものすごぅー名誉なことだったんでよ」と話す人がいた。
「ほうじゃ、ほれに小まいときに鳴り子に選ばれるんは嬉しかった」と合いの手を入れる人。
先輩たちの話にだまって耳を傾ける若者たち。
「昔はまだまあ人がようけおったでよ」
「ほうじゃ、夜もようけ騒ぎよった」との声も挙がり、話は熱を帯びていく。

【気軽に受け入れる】
遠洋漁業が盛んだったころ、椿泊からも多くの人が福岡(九州)などの県外に働きに行っていたが、9月の祭りには帰ってきたという。今もこの時期を里帰りにしている人は多い。

「近づいてくると落ち着かんですね。今年も仕事をさぼって来ました」としゃべってくれた人は、吹田市(大阪)から駆けつけてきたという。
すでに、実家はこの町から引っ越したが、それでも変わらずに受け入れてくれるのが嬉しいという。
「また3時間かけて、大阪に帰ります」との言葉を残して、彼は立ち去っていった・・・。
普段、静かな漁師町が一変し、街中が祭りに沸いた3日間。
目の前に広がる海は穏やかな表情を浮かべ、静かに日は暮れようとしていた。

だらだら祭り だらだら祭り
だらだら祭り だらだら祭り

 

橘海正八幡神社秋祭り 県下唯一のけんかだんじり


橘町では海正八幡神社の秋祭りが行われる。
重さ約4トンのだんじりが町内の若衆たちによって曳かれ、猛烈な勢いでだんじり同士をぶつけ合い、ときには血気にまかせて揉みあったりすることもある。豪快で勇壮なお祭りだ。

「エイエイサッサ、 エイトサッサ」

漆塗りの屋根や欄干、見事な彫り物や美しい細工が施されただんじりは、町内を「東」「中」「西」「先」に分かれた地域がそれぞれ保有している。
だんじりの屋根には、竹と笹で作られた「やんだし」といわれる船の舳先があしらわれ、多くの提灯が上部を飾っている。
中には、太鼓や鉦、つつみを打つ「打ち子」と呼ばれる小学生の子どもたちが乗り込み、昔ながらの音を奏でる。
町内を東西に走る旧道は車一台が通れる程度。この細い道を揃いの半纏をまとった若衆たちが、掛け声よろしく曳いていく。
一見のどかで優美な風景だ。
しかし、それも別のだんじりに出会うと一転する。
若衆たちの威勢のいい掛け声とともに、全速力で曳かれただんじりが、相互にぶつかって行くのだ。

「いっさんじゃい! いっさんじゃい!」
(前進の際のかけ声。勇んで行けという意味)
ガツーン!
鈍い音が町中に響き渡り、取り巻く見物人からは、どよめきと歓声が湧き上がる。

「戻せ―、戻せ―」

との声が上がり、波が引いていくようにだんじりは引き戻されていく。
そして、再び全力で疾走。

ドーン!

まるで、大きな荒波が激しくぶつかるように・・・。

祭りの期間中、町には若者が多くなる。普段これだけもいたのかと思うくらいに。
だんじりの「曳き手」になれるのは高校生以上だ。早く参加したくて、待ちわびる子もいる。
初参加したときの震えの感触を昨日のことのように覚えている子もいる。
また県外に、進学や就職していても参加するために帰省する子も多い。
祭りが大好きで、町に残る子もいる。

【江戸時代初期から始まった。】
古くから天然の漁港として栄えてきた橘町。
中でも海正八幡神社の歴史は古く、起源は鎌倉時代まで遡ることができるという。
神職を務める折原英文さんの話によると、祭礼は江戸時代初期から行われており、代々の蜂須賀藩主からの信仰も厚く、お社の修繕費用も出ていたという。
海上での安全、大漁を願い、始まったとされる同神社祭礼。
海の男たちの誇りと豪快さが残る祭りといえよう。

橘けんかだんじり 橘けんかだんじり 橘けんかだんじり

 

桑野町羽落神社秋の祭礼 悪魔を払う奉納獅子舞


桑野町の羽落神社では地元(浦ノ内)若連たちによる獅子舞が奉納される。
神社がある鳥取山は険しく、足に自信がある者でも登るのには半時はかかるが、山頂から聞こえてくる鐘や太鼓の音に足は励まされるだろう。

神事の後、8人の若連たちが神輿を担いで、尾根伝いに御旅所をめざしていく。
「チョーサー」「チョーサーじゃ」と、担ぎ手たちから放たれる声。
勇壮に舞うほどよいとされている。
祭りのクライマックスは、唐子と呼ばれる童子と獅子との掛け合いだ。
唐子が陽気に駆け巡るうちに寝入っている獅子に出会い、ささらを肩に愛らしい格好で獅子にちょっかいを掛けたり、またがったりしてじゃれる。
そのうちにささらを打ち鳴らして、獅子を起こしてしまうのだが、唐子は勇敢にも獅子に立ち向かい、鎮めていく。その様子が何ともかわいい。

「ヨーイ、ヨーイ、ヨーイソラ」との掛け声とともに鳴り物が山中に響きわたっていく・・・。

【獅子舞の起源は】
地元の桑野公民館長に話を聞くと、何でも天保3年(1832年)ごろに悪病がこのあたり近辺を襲ったことから、一人の住民が願いを込めて獅子を作って奉納したところ、霊験あらたかで病魔も退散し、平穏な生活が戻るとともにその後の村の繁栄にも貢献したことが今に伝わったものという。
平成8年には市の民俗無形文化財の指定も受け、地元の浦ノ内では保存会も結成されるなど、大切に保存継承されている。

羽落神社祭り
羽落神社祭り 羽落神社祭り

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